[ドラマ放送記念]千葉雄大×永山絢斗 ダブル主演インタビュー

6月4日の初回放送を目前に控えた『WOWOWオリジナルドラマ ダブル』。

ダブル主演である宝田多家良役の千葉雄大さんと鴨島友仁役の永山絢斗さんのおふたりに、役への取り組みや撮影現場でのエピソードなどを伺いました。

取材・構成:岩根彰子 撮影:中西学 協力:野田彩子

 

 

漫画原作をリアルに演じる難しさとは

 

——まずは今作のオファーを受けたときの第一印象を教えてください。

千葉:僕は正直、最初は尻込みしていたんですが、感覚的に飛び込んだというのが近いですね。準備段階に入ってからは、なんで飛び込んでしまったんだろう、と後悔することもありましたが(笑)。いまは本当にやってよかったと感じているので、最初の衝動的な感覚は間違いじゃなかったなと思います。

 

永山:僕は前々から同年代の役者さんとダブル主演というのをやってみたかったので、声をかけていただけて嬉しかったです。さらに同年代の中でも千葉雄大という役者とは、多分、色が似ていないというか少し違っているというか、とにかく共演する機会はあまりないだろうと思っていました。だから千葉くんの名前を見て、どんな人だろう、どんな作品になるんだろうっていう好奇心も大きかったですね。

 

千葉:これは自分で言うのも嫌だし、書かれるのも本当は嫌なんですけど、宝田多家良っていうキャラクターには「天才役者」っていう形容詞がついているので、演じるのがちょっと難しいなと思っていたんです。でも「天才の芝居ってどういうことなんですかね?」と監督にお聞きしたら、「僕は役者には皆それぞれの良さがあって、天才っていうのはいないと思っている」とおっしゃっていて、それで少し肩の荷がおりた気がしましたし、やる気も出ましたね。それなら、やってやろうと。

 

永山:実は最初に原作を読んだとき、僕は多家良がやりたかったんですよ。

 

千葉:そう言ってたねー。

 

永山:ふざけて「交換する?」なんて言ったりもしてたけど、あらためて考えたら、やっぱり友仁でよかったなと(笑)。多家良役はやっぱり大変だよね。難しい役だと思います。

 

 

——「ダブル」は役者を主人公にした漫画なので、今作では俳優が俳優を演じる難しさと、二次元の漫画原作ものを演じることの難しさ、その両方があったと思います。それぞれ、苦労などはありましたか?

千葉原作がある作品は過去に何本かやらせてもらっていますが、映像化するときに原作のエッセンスのどこをどう抽出するかという点には、いろんなやり方があると思うんです。今回のドラマ版『ダブル』では、原作で描かれているいろいろな要素の中から、友仁と多家良、そして他の魅力的な役者たちが揃ってやる「芝居」であり「役者」っていうものが一番色濃く抽出されていたと思うので、自分はそこを一生懸命やることを意識していました。

 

永山役者が「演じる」ことへどうアプローチしていくか、ということは原作や脚本にかなりしっかり書かれているので、僕はわりと誠実に、「30歳すぎて夢を追いかけている男」を演じたという意識です。ただ、僕自身が舞台で演じることが苦手というか、あまり経験がないので、劇中での板の上に立つシーンは、友仁とは反対にとても苦しみました。

 

千葉今回、監督が原作のカットや綺麗な絵に寄せる感じで画面を作り込んで撮ってくださることがときどきあったんです。そのとき、そこに自分がどう多家良としての感情をのせて血を通わせるかっていう部分で、難しいところもありました。

 

永山たしかに監督はすごく「絵」を大事にしている人でしたね。監督には「役を演じてもらう以上、そこは役者さんに任せているので、役者さんが演じたことは全部正解だと思っている」と言われたので、その言葉を信じて、自分を信じてやってました。だから、僕はあまり原作のイメージを壊さないように、ということは意識してなかったですね。それが壊れてしまうことが、いいことなのか悪いことなのかもわかりませんし、イメージと全然違うよ、と言われても、皆、それぞれに頭の中に流れている声色とかは違うと思うので、それは仕方ないじゃんってとこもありますし(笑)。

 

千葉いや、絢斗くんの友仁さんは原作ファンの方も納得だと思うけど。

 

永山いやいやいや。でも、まだ自分たちも仕上がりを見てないからね。ちょっと凝った特殊な照明を使ったりもしていたので、最終的に画面がどうなってるのかわからない。だから個人的にオンエアが楽しみですね。

 

千葉役者としてリアリティのあるシーンもありつつ、ちょっとファンタジー的な部分もあって、これがどういう風に映像で再現されるのかな、という面白さはありました。

 

 

——多家良と友仁という役を、それぞれどのように捉えて演じられましたか?

千葉僕は、あまり深く考えなかったんですが(笑)、後からスタッフの方に「千葉くんは人たらしだよね」って言われて、それは多家良に通じるものがあったので、「周りが手を差し伸べたくなるような人」になっていたらいいなと思います。

 

永山なってましたよ。僕は自分自身があまり面倒見がいい方ではないので、友仁が多家良と一緒にいて色々と世話を焼く行動やセリフにあまり共感するところはなかったんです。ただ、こういう話なので撮影しているときも休みの日でも、なんとなく「千葉くん、元気かなあ」とは常に思っていて、それが撮影が進んでいく内にだんだんと本当の気持ちになっていった。毎日一緒なわけではないので、たまに千葉くんと撮影現場で会うと、すごく嬉しい気持ちになったりして。恋をしてるのかと思いました(笑)。

 

千葉撮影が終わってからも連絡をくれてるんですよね。この間、生配信の舞台みたいなことをやったんですが、それが終わったタイミングで真っ先に絢斗くんから「おつかれさま」って連絡が来て、なんかキュンとしました(笑)。

 

永山その日は午前中から「ああ今日、千葉くん本番だな。ドキドキしてるだろうな」と思ってて、今ごろ終わったかなって勘で連絡を。だから舞台そのものは見てないんだけどね(笑)

 

千葉そこは言わなくていいじゃない(笑)

 

永山 撮影が終わってからも何回か会ったりしていて。僕、普段は共演者とあまりこういう仲にはならないので、この作品には感謝してます。最近、あんまり同年代では遊ばないから。

 

 

同い年の二人が30代になって思うこと

 

——千葉さんと永山さんは同じ33歳で誕生日も2日違いということですが、今回共演してみての、お互いの印象を教えてください。

永山『ダブル』は今回のドラマがきっかけで読んで、大好きな作品のひとつになったんですが、原作漫画の世界観がすごく仕上がっているので、これをリアルな人間が演じるとどうなるだろうという不安もあったんです。で、昨年末に顔合わせがあり、本読みが始まったんですが、そこで千葉くんと作品について話していくうちに、お互いその部分に関して考えていることが似ているとわかっていった。最後まですごくいいパートナーというか、力強い味方でいてくれて、ありがたかったですね。

 

千葉絢斗くんはすごく真面目だし役への向き合い方も誠実で、見習わなきゃいけないなと思ってました。僕はわりと「とりあえずやってみよう」みたいなところがあるので。でも一緒に戦うところは戦ってくれて、本当に頼もしかったです。あとはときどき現場で末っ子感というか、お茶目で可愛い部分を出すのがずるいなっていうのはありましたね。

 

永山:これを千葉雄大に言わせるとは、俺もなかなかですね(笑)

 

 

——役者に限らず、30代になると誰もが仕事に関して「このままでいいのか」と考えることがあると思います。お二人は20代の頃と30代になってから、仕事観にどう変化がありましたか?

千葉現場で年下の人が増えてきたね。

 

永山それはあるね。番手のこともあるし、どうしても少し責任感が出てきている。また年齢だけでなくて、コロナのこともあって、仕事に対する向き合い方は少し変わってきたかもしれません。

 

千葉僕は、伝えるって難しいなと思うようになってきた。これはあまり好きじゃない傾向なんですが、年々、自分が面倒くさくなっていっているというか。デビュー当初よりも周りがよく見えるようになってきたせいで、自分が疑問に思ったりしたことに関して、「もっとこうしたらいいのにな」みたいなことを現場で言ってしまったりするんですよ。その伝え方も難しいし、それを自分が言うことによって、反対に自分もちゃんとしなければいけないという責任感も出てきますし。そういう意味では、過渡期なのかなと思います。

 

永山でも、そういうのを全部ぶっ壊したい、みたいなことも言ってたよね。

 

千葉そうですね。破滅願望みたいなものもある。その辺は、演じている役にリンクしてきちゃうというか。多家良みたいな役をやっていると、影響されたりしますね。

 

永山芸歴もそこそこ長くなってきて、自分で自分の癖みたいなものがわかってくると、そういうものを作品ごとに毎回、壊していきたいなって思うようにはなりますね。そういう年になってきたなって。

 

 

二人のバランスがとても良かった

 

——先ほど永山さんが、多家良をやりたかったとおっしゃっていましたが、永山さんから見た千葉さんが演じた多家良の印象、反対に千葉さんから見た永山さん演じる友仁の印象はいかがでしたか。

千葉絢斗くんの友仁さんは、多家良の世話を焼いてくれるような二人の関係性から、友仁自身に立ち返ったときの葛藤がすごく素敵だなと思ってました。なんというか、幅があるといいますか。そして、絢斗くんの友仁が魅力的であればあるほど、自分が多家良をやるときのプレッシャーにもなっていましたね。

 

永山いやいや、それはこちらのセリフです。千葉くんにとっての多家良って、自分の素を投影しにくい役だったと思うんですけど、彼はしっかり多家良という役を演じながらも、感情がのるところではちょいちょい自分自身の本当の気持ちものっけていて。そこに自分にない技量みたいなものを感じましたね。僕が多家良役をやりたいなと思ったときになんとなく想像していた多家良像みたいなものを超えてくるというと偉そうですが、千葉くんが演じた多家良がすごく好きでしたし、友仁という役を通して僕自身が助けられた面もありました。

 

 

——物語の中では「嫉妬」という感情も描かれていますが、お互いに嫉妬したところはありましたか? 

永山それは内緒です(笑)

 

千葉僕はあります! なんていうか、絢斗くんって硬派なイメージというか、僕みたいにヘラヘラしてないイメージなんですが、さっきも言ったみたいに急になんか出すんですよ、甘えん坊みたいな雰囲気を。

 

永山出てる?

 

千葉出てるのよ! それで皆がもれなく籠絡されていくからさ。僕は普段からちょっとヘラヘラしているから、反対にたまに真顔になると周りが「怒ってるのかな?」みたいな空気になって、損してるなあって(笑)

 

永山いやいや、逆にそういうときは千葉くんが集中してるって思って、皆がピリッとしてよかったよ。まあ、結果的にいいバランスだったってことですね。

 

千葉たしかに、二人でいるとすごくバランスよかった。

 

 

——原作を読んで、ここは演じてみたいと思った場面や、印象に残っている場面などがあれば教えてください。

永山イマジナリー友仁が出てきたときはちょっとワクワクしましたね。原作2巻の表紙の場面ですね、「これは俺の演技プランです」っていう。それをドラマで、生身の人間がやるにあたって、どういう見せ方にするんだろうと。

 

千葉僕は原作でいうと4巻の、友仁が久しぶりに多家良の部屋に泊まった夜の場面は演じていてしんどかったですね。実はこれがクランクアップだったんですが……。

 

 

——そこはお二人で演技プランを話し合ったりしましたか? 基本的に撮影現場では監督から細かい演出指示があったんでしょうか、それとも自由度は高かったのでしょうか? 

永山細かい演出みたいなことはあまりなかったですね。ベースには原作がありましたけど、基本的には監督も「役者に現場に入ってやってもらう以上は、それが正解」という方だったので。

 

千葉劇中劇の場面で、監督から「二人が楽しそうに演じているところを撮りたい」って言われたときに、「楽しそう」というのにも解釈がいろいろあるじゃないですか。僕としては、わかりやすい「ハッピーな楽しさ」ではなく、二人がガッツリぶつかりあっている楽しさが映ればいいんじゃないのかな、って思っていて。そこはどうしたらいいのか話し合いになりましたね。結局、ガッツリやったら楽しそうに映ったのでよかったんですが。

 

 

——原作のなかでは、多家良が「役をつかんだ瞬間」が描かれますが、そういう感覚はお二人にもありますか? それはどんなときに訪れるんでしょうか?

永山もちろん現場に入る前にある程度は自分の頭や体を通して役のことを想像したりしますが、衣装合わせなどを通して少しずつ出来上がっていく部分もあるし、その組のスタッフさんたちのカラーによっても役の雰囲気は変わってくるので、現場に入ってみないとわからないですね。僕の場合、最初は手探りな部分が多いです。撮っているシーンに左右されたり、撮影が進むなかで大切なセリフを言ったときに何かつかめたような気がすることもありますが、監督のジャッジもありますから。映像の場合、自分がどう思えたかより、結局は監督のカットがかかったらOK、ですから。

 

千葉つかめたっていう感覚はちょっとわからないんですが、お客さんがどう受けとってくれたのか、そこから何か感じることはありますね。自分が思っていた気持ちがそのまま汲んでもらえたときも嬉しいし、意外な伝わり方をしても楽しいですし。『ダブル』に関しては、友仁と離れて暮らすようになったシーンで、監督に「友仁さんを忘れてください」って言われたとき、僕は「忘れる、じゃないな」って思ったんですよね。「忘れるじゃなくて、仕舞う、かな」って。演じていて、そう自然に思ったんです。多家良の感覚として、その違いって大事だなと思って演じました。それがいい方向に出ていればいいんですが。

 

 

——最後に読者へのメッセージをお願いします。

永山まだ完成した映像を見ていないので、僕自身もどう仕上がっているのか楽しみにしているところです。ただ、僕は友仁を最後まで自信を持って演じ切ったし、僕が見ていた千葉くんの多家良は多家良でしたから、きっと原作ファンの皆さんにも楽しんでもらえるドラマになるんじゃないかなと思います。

 

千葉正直、僕の場合は雰囲気も背格好も、原作の多家良とは「作画が違う」んですけど、友仁さんに対する気持ちや、お芝居に対する気持ちはすべて汲んで演じ切れたと思っています。そして現場はすごく楽しかったので、きっと大丈夫です。

 

 

【主演のおふたりはインタビューだけではなく写真撮影の際にも色んなポーズをとってくださり、ご協力をしてくださりました!】

 

【原作者・野田彩子先生と主演のおふたりの素敵な笑顔の記念撮影。みなさま、本当にありがとうございました!】 

 


 

◯千葉雄大(ちば ゆうだい):

1989年、宮城県生まれ、O型。
2010年にテレビ朝日系特撮『天装戦隊ゴセイジャー』の主役・アラタ(ゴセイレッド役)でデビュー。その後も、俳優・モデル・監督など様々な分野で活躍している。

 

◯永山絢斗(ながやま けんと):

1989年、東京都生まれ、B型。
2007年に日本テレビ系ドラマ『おじいさん先生』でデビュー。その後も、多くの話題作に出演。最新の出演作である映画『峠 最後のサムライ』は今月6月17日公開。

 


 

「WOWOWオリジナルドラマ ダブル」

放送日: 6月4日(土)午後10時30分放送・配信スタート(全10話)※第一話無料放送
配信:各月の初回放送終了後、同月放送分をWOWOWオンデマンドにて一挙配信 ※無料トライアル実施中

原作:野田彩子『ダブル』(ヒーローズ刊)

監督:中川和博

出演:千葉雄大 永山絢斗 / 桜庭ななみ 堀井新太 工藤遥 板橋駿谷 前野朋哉 水間ロン 中山忍 橋本じゅん 神野三鈴 津田寛治

製作著作:WOWOW

 


 

◯構成:岩根彰子

フリーランスライター。インタビューを中心にテレビや映画などに関する記事を多数執筆。また、書籍の編集補助も手掛けるなど多方面で活動を行なっている。 

◯撮影:中西学

カメラマン。日本の四季や伝統文化をオリジナリティ溢れる視点やカラーで表現することを常に意識し、さまざまな分野で活躍している。

 

【千葉雄大】HM:奥山信次(barrel)/ST:寒河江健(Emina)
【永山絢斗】HM:新宮利彦(VRAI)/ST:BABYMIX