第4回 HERO'S×YOANI新人漫画賞 受賞者大発表!!!


2019年からスタートしたプロジェクト「HERO'S×YOANI 新人漫画賞」。
栄えある第4回は優秀賞1作品、奨励賞2作品、期待賞4作品、最終選考作品2作品が選ばれました!
そのうち優秀賞、奨励賞、期待賞は期間限定でコミプレにて配信中。是非お楽しみください!!

 

優秀賞

「彼方の島」水羽

https://viewer.heros-web.com/episode/316190246996485689

【あらすじ】
「私」は一匹の精霊に出会った。精霊は私に言ったーー「一緒に外へ景色を見に行こう」。そして私と精霊は旅に出た。その全てを描くためにーー。

 

【講評】
コマのリズム感が抜群に良いですね。大ゴマの入れ方、そこに至るまでのテンポ、一コマずつのカメラワーク、どれも素晴らしくセンスを感じました。そのため、セリフでフォローしなくてもコマを追いかけるだけでキャラクターの感情を伝えることができており、これは今後の強い武器になると思います。ただ、今回の作品にはドラマはなくイメージ世界の描写にとどまっている感じなので、ここにドラマを入れ込んだ上で同じクオリティの作品に仕上げられるかどうかが課題です。次回作に期待しています。

 

奨励賞

「明日もおいしい」はるおみ

https://viewer.heros-web.com/episode/316190246996485695

【あらすじ】
娘・ことみのために毎日お弁当を作るパパ。だが、半年経っても卵焼きすらまともに作れない有り様。ことみが全部食べてくれるよう頑張るが……。

 

【講評】
描線が安定しており、読みやすい原稿に仕上げられています。キャラクターの表情に気をつけられているのも好評価です。ストーリーに関してはまだまだ課題が多いように感じます。今回のお話も、オチのアイデアに引っ張られすぎて、ドラマのプロセスが疎かになってしまっています。半年間続いてきた日常が変わる日なのに、そのきっかけがなく、「突然なんで料理ができるようにしたの?」と疑問符がついてしまいました。「なんとなくいい話」で誤魔化さずに、キャラの行動理由をきっちりと紡いでいきましょう。

 

 

 

 

 

「相聞百歌」杨小菲

https://viewer.heros-web.com/episode/316190246996485699



【あらすじ】
中間テストを控え、勉強するために幼なじみの義明を家に誘った美夜。本棚に並んだエロ漫画の隠し方から、何やら妙な空気になっていき……。

 

【講評】
セリフがうまく刈り込まれているので、日常会話のテンポを壊さずに意図を伝えられており、とてもリズムの良い作品でした。ただ、見せたいポイント・テーマまであっさりと展開しすぎており、読み終わった後に残るものがありませんでした。読み手に何を伝えたいのか、何を楽しんでもらいたいのかを意識して話作りに取り組んでください。

 

 

 

 

 

期待賞

「ソード・アンド・シールド」 ウォン

https://viewer.heros-web.com/episode/316190247001197943

【あらすじ】
ホンドン市の警察官・シールドは自他ともに認めるマニュアル人間。事件やトラブルが起きても、マニュアルを確認してからでないと動けないという有り様。そんなシールドのパートナーとして、警察学校で問題児だったソードが配属されてきた。全く噛み合わない二人だが、ある日警察署を不審な人物が襲撃してきて……。

 

【講評】
全てのページ、全てのコマが丁寧に描かれており、とても誠実な作品だったと思います。キャラクターも丁寧に作ろうとしているのは感じられるのですが、今作ではうまく機能していませんでした。描き手が「マニュアル人間はダメだよね」という思い込みに縛られすぎていて、主人公に最初から魅力を感じませんでした。また、セリフでは「マニュアル」という単語が何度も出てきていますが、それが具体的にエピソードとして描かれてないのも×。まず読者に主人公への興味を持ってもらうことが大切です。

 

「廃寺の注意事項」マヨミ

https://viewer.heros-web.com/episode/316190247001197947

【あらすじ】
気がついたら拓真は古びた廃寺にいた。そこにいる理由もこれから何をしていいのかもわからない中で、一枚の紙切れを見つけると、「守らないと命の保証はない」という廃寺での注意事項が書かれていた。それから拓真に不思議な出来事が起こり続け……。

 

【講評】
冒頭の掴み方は一番面白く、興味を持って作品を読み始めることができました。ルールが進んでいくごとに「次は何が起きるんだろう」「このルールは今後どう繋がっていくんだろう」とワクワクしながら読み進めました。ですが、後半の展開が尻すぼみで、結局全体のルールが曖昧なまま終わってしまったのが残念。また、そのルールの中で主人公がどう振る舞うのかも楽しみだったのですが、結局キャラとしての成長は無かったように感じました。あくまで漫画の設定やエピソード、ルール等は全て主人公が輝くための道具でしかありません。キャラクターを見せることを意識しましょう。

 

「スライム「の」娘」ユカタ煌

https://viewer.heros-web.com/episode/316190247001197951

【あらすじ】
ゆうこが朝起きたら、なぜかベッドも体もベトベトに。この歳になっておねしょをしたのかと焦るが、ゼリー状のそれはどうもおねしょではなく…。そしてその様子を見た父親から衝撃的な事実を告げられる。
「お前はスライムの資質に目覚め、同時に発情期を迎えたのだ」と。

 

【講評】
自分の描きたいものがはっきりしており、読み手を楽しませようとする意図は今回の応募作の中で一番だったと思います。ただ、女の子のビジュアルが肝になってくる作品で、その引き出しの数が少ないのはいただけません。魅力的なキャラの書き分けを増やしていきましょう。また、「スライム」「発情期」という単語に引っ張られすぎて、エピソードが単調になってしまっています。情報やキーワードをどのように読者に伝えていくか、意識してみましょう。

 

「雨滴と奏でる霖の音」瀧田ひびき

https://viewer.heros-web.com/episode/316190247001197955

【あらすじ】
孤児院で生活する雨滴。ある日、雨滴は森の中に置かれているピアノの前で、青年・優霖と出会う。不思議な空気を纏う優霖だが、なぜか雨滴に「また自分を殺すつもりなのか」と問いかける。雨滴の「誰にも言えない悩み」を見透かすように……。

 

【講評】
画面の密度も高く、とても熱量を感じられる作品でした。ただ、情報をうまく整理できていないため、設定以上に複雑な感じに仕上がってしまったことは否めません。まず主人公の見せ方があまりよろしくありません。シーンごとに設定が追加されていくので、キャラの感情にどうしてもついていくことができませんでした。主人公のことをできるだけ早く読者が理解できる(興味が持てる)よう努めていきましょう。キャラクターを特徴づけるために長々と語るよりも、強いエピソードで見せていくことができれば演出の幅が広がるはずです。

最終選考作品

「ライトドクター」星奈みる

【あらすじ】
「シャドウウイルス」と呼ばれる未知のウイルスが蔓延している世の中。そのウイルスと戦うドクター達がいた!研修医の朝比奈は初めて担当した子供・彩が退院して、喜びに溢れていた。しかし、未知のウイルスの影響でその病気が再発した時、朝比奈は……。

 

【講評】
おそらく星奈さんは漫画をたくさん読み、漫画を描き慣れているのでしょう。書き味はこなれて画面も華やかです。ただ、話作りが「なんとなく」の手癖になっていないかもう一度見つめ直してみてください。今回のお話も冒頭の設定「シャドウウイルス」というものを作り、主人公を「医者」にしたのは良いのですが、それが全く活かされていません。ほぼ前編具体的に命を救うという医者本来の描写はなく、よくわからないものとのバトルに終始してしまっています。またそこで交わされる会話も、なんとなく見覚えのある会話劇になってしまっています。雰囲気だけで漫画を描いては伝えたいものも伝えられません。

「最後の祭り」冬柴ざじょ

【あらすじ】
そうた・こた・ゆたの仲良し三人組は、今年も8月最後に近所の神社で開かれるお祭りを楽しんでいた。だが、その途中で、そうたが明日引っ越すことを知ってしまった三人は……。

 

【講評】
「子供を描いた良い話」というのは、なんとなくまとまってしまうのですが、だからこそそこに強い感情や言葉、思いが必要になってきます。残念ながらこの作品のキャラクター達からはその思いを感じられませんでした。キャラクターをフォーマット化せずに、きちんと掘り下げてあげてください。そうすればシンプルな設定でもそこに生まれてくる感情が見つかるはずです。