
2019年からスタートしたプロジェクト「HERO'S×YOANI 新人漫画賞」。
栄えある第6回は優秀賞1作品、奨励賞1作品、期待賞2作品、最終選考作品4作品が選ばれました!
そのうち優秀賞、奨励賞、期待賞は期間限定でHERO’S Webにて配信中。是非お楽しみください!!
優秀賞
『終夏』 海麒麟
https://viewer.heros-web.com/episode/12207421983395330471

【あらすじ】
中学最後の夏が終わった── 。女子テニス部の「橘美香」と「結城真琴」は、気が合わないながらもテニス部のペアだった。1年からずっと一緒にやってきた二人が最後に思うことは…。
【講評】
24ページという限られたページ数の中で、キャラクターの心理やドラマが丁寧に描かれており、主人公たちに親しみを持って読み進めることができました。特に感情表現がとても印象的で、泣き顔や後半の展開からは、登場人物の気持ちがまっすぐ伝わってきます。クールな結城と感情豊かな橘の対比や、物語の中にさりげなく挟まれる軽やかなやり取り、試合の始まり方など、構成の巧みさも作品の魅力を高めていました。
奨励賞
『俺を描けよ!』須山茜/誕承日
https://viewer.heros-web.com/episode/12207421983395330477

【あらすじ】
「消しゴムくん」と「シタガキ」。シタガキに合う役を、世界を、探すため旅する二人。そしてそんな彼らを描くのは「何者でもない僕」だった。
【講評】
画力が高く、テーマ設定もとても興味深い作品でした。タイトル通り「自分を描く」「さらけ出す」という創作の原点に踏み込んでいる点に強く惹かれますし、自分自身に対しても率直な視点を向けられているところに、作者の高いメタ認知力を感じました。難度の高いテーマでありながら、最後まで破綻させずに描き切っている点も大きな強みだと思います。
一方で、実験的な構成だからこそ、物語の本題に入るまでの導入部分に、もう一工夫あると読者がより入り込みやすくなると感じました。ストーリーを理解させること以上に、「このキャラクターをもっと見ていたい」と思わせる演出を意識してみることで、作品の伝わり方がさらに豊かになるのではないでしょうか。次は、こうした強みを生かした、より物語性のある作品もぜひ読んでみたいと思いました。
期待賞
『ミサンガと幼馴染』 アオフライ
https://viewer.heros-web.com/episode/12207421983395330481

【あらすじ】
高校中学の入学式で幼馴染の「東晦スイ」と再会した「心海子子音」。しかし久しぶりに会ったスイは、思い出の中の彼女と雰囲気が違っていて…。
【講評】
主人公の天真爛漫さと、どんな状況でも目的のために前に進もうとする強さがとても魅力的で、楽しく読み進めることができました。たとえ強い言葉を向けられても折れずに行動する姿からは、主人公の芯の強さがしっかりと伝わってきます。
一方で、スイちゃんが置かれているつらい状況や感情について、読者がもう一歩踏み込んで寄り添える描写があると、物語全体の印象がさらに良くなると感じました。特にラストに、ささやかでも「希望」を感じられる瞬間や、スイちゃんの気持ちが少しでも前を向くきっかけが描かれると、主人公の行動がより深く胸に響き、読後感もより温かいものになると思います。
主人公の明るさと強さは大きな魅力なので、そこに相手の感情への共感が重なれば、読者が主人公をさらに好きになれる作品になるのではないでしょうか。
『僕にあるもの』ヤニチンパン
https://viewer.heros-web.com/episode/12207421983395330485

【あらすじ】
男子高校生の「光彦」はクラスメイトの女の子に告白するも玉砕…。そんな中、幼馴染の「葵」から、彼女の好みのタイプの情報が。彼女好みの男になるべく努力する光彦は、果たして彼女を振り向かせることはできるのか。
【講評】
愚直に前へ進み続ける光彦くんの姿が印象的で、そのまっすぐさには自然と好感を持ちながら読むことができました。一気に読ませる構成や見せ方もよく、何気ないセリフの言葉選びからもセンスの良さが感じられます。特に幼馴染の女の子は存在感があり、物語の中でもとても魅力的なキャラクターとして描かれていました。
一方で、主人公の「まっすぐさ」がやや強く出すぎているため、行動や感情の理由が読者に伝わりにくい部分もあるように感じました。ヒロインのどこに惹かれたのか、なぜその行動に至ったのかといった心の動きがもう少し描かれると、主人公への共感が深まり、物語全体の説得力も増していくと思います。主人公をより立体的で魅力ある人物として描ければ、読者にとってさらに心に残る作品になるはずです。
最終選考作品
『罪のトロイメライ』上永吉千里

【あらすじ】
悪魔に恋した少年「ヴィゼフ」。彼は悪魔「ルゼ」に会うために村外れの教会に通っていた。悪魔は罪を犯すから悪魔なのだという。そんなルゼの罪とは一体…。
【講評】
少し切なさの残るラストシーンがとても印象的で、読後もじんわりと余韻が残る作品でした。登場するキャラクターたちにも自然と好感が持て、会話を中心とした構成の中でも、アングルを上下に変えるなど画面づくりに工夫が感じられ、構図センスの良さが伝わってきます。一途な少年の描き方も魅力的で、物語の軸としてしっかり機能していました。
一方で、キャラクターのアップを多用している分、場面によってはやや画面に圧迫感を覚えるところもあり、引きのカットとの使い分けができると、より効果的に感情が伝わるように感じました。また、物語の流れに小さな事件やすれ違い、緊張感のある展開が加わることで、人物関係がさらに立体的になり、よりドラマチックな印象になると思います。短いページ数での挑戦も含め、今後の作品の広がりをぜひ見てみたいと感じました。
『save s’he』離思楽

【あらすじ】
精神病の妻「美瑠」を支える「守」。美瑠は一度感情が爆発すると抑えることのできない、間欠爆発症だった。妻の暴力に耐え続ける守は、苦しい日々を過ごしていく。
【講評】
作画や構成にはまだ荒削りな部分が見られるものの、「病」という重いテーマに真正面から向き合い、本気で描こうとしている姿勢に強く心を揺さぶられました。破滅的な結末に流れがちな題材でありながら、最後に希望を描いている点も印象的で、作品全体に救いを感じさせてくれます。主人公が犬の死体を目にし、気づけば電車に飛び込もうとしている場面は、感情の揺れが生々しく表現されており、非常に強い印象を残しました。
一方で、感情表現の勢いに対して構成面ではやや整理しきれていない印象もあり、60ページという分量に対して内容が薄く感じられる部分がありました。このテーマであれば、描く要素を絞り込み、ページ数を削ることで、より密度の高い作品に仕上げることもできたのではないかと思います。描きたいことの多さは大きな強みですが、それをどう整理し、「読者に読ませる」形に落とし込むかを意識することで、作品の力はさらに高まっていくはずです。
『給食ワゴンRTA』円周率

【あらすじ】
学校給食、その配膳ワゴンをいかに速く運べるか…。リアルタイムアタックが今、始まる!
【講評】
誰もが経験したことのある「給食」という身近な題材に、「RTA」を掛け合わせた発想がとても面白く、バカバカしさと勢いを兼ね備えた作品でした。学校という本来は堅苦しい場所を、「いかに本気で遊ぶか」という視点で描こうとしている点に、作者の発想力とテーマへの愛情を感じます。「他人から見ればどうでもいいことに全力になる」という行為も、多くの読者が共感できる魅力的なポイントでした。冒頭の緊張感やテンポの良さ、メリハリのあるコマ割りなど、読み手を引き込む工夫もしっかりと効いています。
一方で、その緊張感や勢いをラストまで持続できると、作品全体の満足度はさらに高まるように感じました。作画など技術面にはまだ伸びしろがありますが、技術は経験を積むことで必ず身についていくものだと思います。ぜひこの「あるある」感覚とテーマへの真剣さを大切にしながら、スキルアップした先で、より完成度の高い「学校RTA」に再挑戦してほしいと感じました。
『イタズラリバウンド』Yoi

【あらすじ】
イタズラ大好きな男子高校生の「加瀬」。そんな彼のお気に入りは同級生の「青木」。青木の怖がる顔が見たくてイタズラしまくっていた加瀬だが、成長とともに青木は無表情イケメンに!どうにかして驚かせたい加瀬が考えたことは…?
【講評】
BL風ではありますが、妙な爽やかさがあり心に残りました。特に青木の「真っ紅」な表情が印象的です。イタズラ好きの加瀬、イケメン無口な青木のキャラクター性はバランスがよく、この二人がこれからどうなっていくのか、まだまだ描ける余白があると思います。12ページで終わるのがもったいなく、続きを読みたくなりました。